創薬等支援技術基盤プラットフォーム(創薬等PF、PDIS)事業の背景には、旧来の構造生物学と生命科学の融合を目指す構造生命科学(Structural Life Sciences、SLS)の概念が存在しています。本ニュースウオッチでは、Nature (Nature Publishing Group), Science (AAAS/Science)などのジャーナルや各機関のプレスリリースなどから、生命現象全般を対象とした研究の成果・手法・動向を取り上げてお届けします。また、創薬等PFとその前身のターゲットタンパク研究プログラム(TPRP)の活動・成果についても随時ご報告致します(タイトルにPDISまたはTPRPと表示いたします)。なお、NEWマークは、直近1週間以内に掲載した記事に付しています。
最新の30件を表示中

2017年01月11日
[注] 2017/01/12 Twitterアカウントへのリンク先追加しました。
第3回アンケートへのご回答を1月31日までにと再度お願い申し上げていたところ恐縮ですが、諸般の事情により、本日にて、ニュースウオッチ記事更新を終了する運びとなりました。
第3回アンケートへのご回答を1月31日までにと再度お願い申し上げていたところ恐縮ですが、諸般の事情により、本日にて、ニュースウオッチ記事更新を終了する運びとなりました。
- 本サイトの公開は当面継続されます。本日、キーワードによる記事高速検索が実装されました ……
[注] 2017/01/12 Twitterアカウントへのリンク先追加しました。
第3回アンケートへのご回答を1月31日までにと再度お願い申し上げていたところ恐縮ですが、諸般の事情により、本日にて、ニュースウオッチ記事更新を終了する運びとなりました。これまでのご支援に深く感謝申し上げます(HS)。
第3回アンケートへのご回答を1月31日までにと再度お願い申し上げていたところ恐縮ですが、諸般の事情により、本日にて、ニュースウオッチ記事更新を終了する運びとなりました。
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本サイトの公開は当面継続されます。本日、キーワードによる記事高速検索が実装されましたので、その間、ご利用いただければ幸いです。
- 例えば、1月10日の記事に掲載いたしましたPDIS論文閲覧回数トップの"ペンブロリズマブとPD-1の複合体の高分解能構造"の記事は、右上の検索窓に”ペンブロリズマブ”とタイプし検索ボタンをクリックすることで瞬時に表示される候補記事からご選択・ご確認いただけます。
- "PDIS"にて検索しますと、472本の関連記事の一覧を数秒で閲覧可能になります。
- "CRISPR"にて検索しますと、540本の関連記事の一覧を数秒で閲覧可能になります。
- なお、PDB IDは検索対象になりますが、論文のDOIは検索対象外です。
- 「タンパク3000」プロジェクトとその継承プロジェクト「ターゲットタンパク研究プログラム」の場合、それぞれのプロジェクトが終了後に多彩な成果が発表され、終了後5年を過ぎてから発表された論文やPDB登録構造も少なくありません。PDISの場合も、今後、多くの成果が発表されていくことが期待されます。PDISその他の成果をTwitter(アカウント CRISP_SCIENCE)ではフォローさせていただく予定でおります。

2017年01月10日

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第3回アンケート結果(1月9日取りまとめ)
- PDIS研究実施者です:30名
- PDIS研究実施者ではありませんが、PDISの研究支援を受けたことがあります:24名
- PDIS研究実施者ではなく、PDIS研究支援を受けたこともありません:271名
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第3回アンケート結果(1月9日取りまとめ)
- PDIS研究実施者です:30名
- PDIS研究実施者ではありませんが、PDISの研究支援を受けたことがあります:24名
- PDIS研究実施者ではなく、PDIS研究支援を受けたこともありません:271名
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全期間(2014年6月〜2016年12月)アクセス動向
- ニュースウオッチ欄の一意な訪問者数とその訪問件数の月変動(参考図のグラフをご参照下さい)
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掲載記事本数
- 総数 2,132本
- 年ごとの内訳:2014年 (6〜12月) 308本; 2015年 861本; 2016年 963本
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[PDIS]PDIS関連記事 掲載動向
- 記事本数(論文紹介にお知らせなども含む総数) 463本
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紹介論文本数 537本
(2016年1月19日までは、1記事に複数PDIS論文をまとめた形式であっため、記事件数より大きな数字になっております)
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[PDIS]論文紹介記事閲覧回数TOP10
- 本ニュースウオッチ欄の認知度と各記事閲覧件数が相関しているため、2014年と2015年よりは本サイトの認知度が高まったと思われる2016年掲載分がTOP10を占める結果となっております。
- TOP10の多くがPDISを含む複数のプロジェクトからの総合的な成果となっています。また、掲載記事の中では高度化の成果と研究支援・共同研究の成果を仕分けしておりません。
- 2016/10/19 ペンブロリズマブとPD-1の複合体の高分解能構造
- 2016/03/23 Cas9への変異導入によってPAMの拡張が可能になる構造基盤
- 2016/06/21 出雲の神(IZUMO1)と女神ユーノー(JUNO)が出会う時
- 2016/02/15 Francisella novicida Cas9の構造決定とPAMの拡張
- 2016/07/28 タンパク質結晶調製に関するプロトコル
- 2016/08/03 無細胞タンパク質合成法を進化させてヒトとマウスの高品質な膜タンパク質生産を実現
- 2016/04/14 膜タンパク質を熱安定化させる変異の同定:統計熱力学に基づいた迅速同定
- 2016/07/07 多剤・毒性化合物排出輸送体(MATE)の脂質キュービック法による結晶化とX線結晶構造解析
- 2016/09/12 Fv抗体フラグメントを利用した結晶構造解析を加速するiRAT法
- 2016/06/28 高圧処理によってリガンド結合能を維持したままGPCRを可溶化

2017年01月08日
- 2016年1月5日、米国癌学会(American Association for Cancer Research)GENIE(Genomics Evidence Neoplasia Information Exchange)プロジェクトは、米欧のGENIE参画8機関の間のシーケンシング、診断プロトコル、サンプルの偏りなどに由来する多様なデータのハーモナイゼーションの多大な作業を経て、各機関における日常的な治療の過程で ……
- 2016年1月5日、米国癌学会(American Association for Cancer Research)GENIE(Genomics Evidence Neoplasia Information Exchange)プロジェクトは、米欧のGENIE参画8機関の間のシーケンシング、診断プロトコル、サンプルの偏りなどに由来する多様なデータのハーモナイゼーションの多大な作業を経て、各機関における日常的な治療の過程で集積した肺癌〜3,000人、乳癌〜2,000人、大腸癌〜2,000人など18,486人の癌患者由来の18,966サンプルのゲノム・データと限定的な臨床データを、公開した。データはHealth Insurance Portability and Accountability Act (HIPAA)に準拠して完全に匿名化されている。癌型としては59種類がカバーされている。
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[データ利用サイト]
- AACR Web site/cBioPortal:氏名とメールアドレスを入力し利用規約に合意することで、Webサイト経由で利用可能に。
- Sage Bionetworks:Synapseアカウントを取得し利用規約に合意することで、ダウンロード利用可能に。
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[参加8機関]
- Dana-Farber Cancer Institute, Boston, Massachusetts;
- Gustave Roussy Cancer Campus, Paris-Villejuif, France;
- The Netherlands Cancer Institute, Amsterdam, on behalf of the Center for Personalized Cancer Treatment, Utrecht, The Netherlands;
- Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center at Johns Hopkins, Baltimore, Maryland;
- Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, New York;
- Princess Margaret Cancer Centre, Toronto, Ontario, Canada;
- University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, Texas; and,
- Vanderbilt-Ingram Cancer Center, Nashville, Tennessee.

2017年01月08日

- Corresponding authors: Patrick Sung (Yale U.); Hong-Wei Wang (Tsinghua U./Yale U.)
- 真核生物における相同組換え(HR)機構の中核であるDNA鎖交換はRad51リコンビナーゼによって進行する。Rad51はATP結合により一本鎖DNA(ssDNA)上に右手系のラセン状のフィラメント(presynaptic filam ……

- Corresponding authors: Patrick Sung (Yale U.); Hong-Wei Wang (Tsinghua U./Yale U.)
- 真核生物における相同組換え(HR)機構の中核であるDNA鎖交換はRad51リコンビナーゼによって進行する。Rad51はATP結合により一本鎖DNA(ssDNA)上に右手系のラセン状のフィラメント(presynaptic filament)を形成する。Presynaptic filamentは相同な配列を有する二本鎖DNA(dsDNA)を探索・侵入してdsDNA内の相補鎖と塩基対を形成(synaptic-complex形成)し始め、postsynaptic complex内で伸張する。
- 研究チームは今回、クライオ電顕法によって、presynaptic complexとpostsynaptic complexの構造を近原子分解能で明らかにした(参考図参照)。また、HRの中間的な状態に相当するsynaptic complexの構造(分解能 14Å)も捉えた。

2017年01月07日

- Corresponding author: Stephen Cusack (EMBL Grenoble Outstation)
- インフルエンザウイルスのポリメラーゼ(FluPol)には、ウイルスmRNA5’末端にキャップ構造を付加する機能がないため、宿主細胞から’cap-snatching’する。すなわち、FluPolは、宿主細胞のRNAポリメラーゼII(Pol II)のC末端ドメイン(CTD ……

- Corresponding author: Stephen Cusack (EMBL Grenoble Outstation)
- インフルエンザウイルスのポリメラーゼ(FluPol)には、ウイルスmRNA5’末端にキャップ構造を付加する機能がないため、宿主細胞から’cap-snatching’する。すなわち、FluPolは、宿主細胞のRNAポリメラーゼII(Pol II)のC末端ドメイン(CTD)と結合し、Pol IIからの新生転写物のキャップ構造を含む短いオリゴマーを切り取り、転写プライマーとして利用する。研究チームは今回、コウモリ由来のA型ウンフルエンザのポリメラーゼ(FluA)とPol II C末端をミミックしたペプチドの共結晶のX線結晶構造解析と変異導入実験によって、両者の相互作用機構を詳らかにし、抗ウイルス薬開発の標的になり得るサイトを同定した(参考図のPDB登録構造参照)。

2017年01月07日

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NEWS & VIEWS author: Karl L. Magleby (U. Miami Miller School of Medicine)
論文 corresponding author: Roderick MacKinnon (Rockefeller U. & Howard Hughes Medical Inst.) - 細胞質のCa2+濃度上昇 ……

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NEWS & VIEWS author: Karl L. Magleby (U. Miami Miller School of Medicine)
論文 corresponding author: Roderick MacKinnon (Rockefeller U. & Howard Hughes Medical Inst.) -
細胞質のCa2+濃度上昇によって活性が上昇するカリウムチャネルの中でも、大コンダクタンスのSol1(BKとmaxi Kと同意)は特徴的な活性化機構を備えている。MacKinnonらは今回、ジャンボアメフラシAplysia californica 由来のSlo1の全長構造を、Ca2+とMg2+の存在下(Tao論文)と非存在下(Hite論文)それぞれについて、クライオ電顕単粒子再構成法で明らかにし、Slo1/BKチャネル独特な活性化機構について新たな知見を得た。
[情報拠点注] 参考図はWikipediaからのBKチャネルのモデル図とMacKinnonらによるCa2+結合Slo1のPDB登録構造 -
[Slo1の全体構造]
- Slo1チャネルは4つのサブユニットで構成され、サブユニットは6回膜貫通領域(S1〜S6)とN末端側の膜貫通領域(S0)、およびC末端の2つのRCK(RCK1とRCK2)ドメインで構成されている(参考図左のモデル図参照)。
- 各サブユニットの膜貫通領域はS4を中心とする電位センサーとS5-S6が形成するポア・ゲート・ドメイン(PGD)を形成する。しPGDはK+が通過する選択フィルターとして機能する。RCK1とRCK2ドメインは細胞質内に位置し、2個のCa2+と1個のMg2+の結合によってK+のチャネル伝導を調節するCa2+センサーとして機能するgating ringを形成している(参考図右のPDB登録構造参照)。
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[Ca2+依存性電位依存性活性化の構造基盤]
- 電位センサーは短いリンカーを介してPGDに結合し、Ca2+センサーは長いリンカーを介してPGDに結合し、電位センサーとCa2+センサーからのリンカーが共にPGDに至っている。また、電位センサーはPGDに直接接触するとともに、Ca2+センサーにもgating ringの上面で直接接触している。
- MacKinnonらは、膜センサーからのシグナルが接触界面を介してgating ringに伝わり、続いて、リンカーを介してPGDに伝わるアロステリック作用の存在を示唆した。
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[大コンダクタンスの構造基盤]
- チャネルポアへ大量のK+を供給するgating ringの存在と、伝導路ポアにK+を誘導する中央部のキャビティーの負電荷の存在に因る大コンダクタンス。
- Ca2+とMg2+が結合していない膜電位がゼロの状態で4種類の構造が同定され、今後、チャネルが閉状態でとる構造の同定と中間的な構造の解明が期待される。

2017年01月06日

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Preview author: David Fushman (U. Maryland)
論文 corresponding author: Yu-Chih Lo (National Cheng Kung U.) - ユビキチンはタンパク質の翻訳後修飾因子であり、タンパク質の分解に加えてタンパク質を多様に制御する。その中で、N末端のメチオニン(Met1)を介してユビキチン分子が連結 ……

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Preview author: David Fushman (U. Maryland)
論文 corresponding author: Yu-Chih Lo (National Cheng Kung U.) -
ユビキチンはタンパク質の翻訳後修飾因子であり、タンパク質の分解に加えてタンパク質を多様に制御する。その中で、N末端のメチオニン(Met1)を介してユビキチン分子が連結された直鎖状ポリユビキチンがNF-kBの活性化に関与することが知られている(参考図参照)。Yu-Chih Loらの研究チームは今回、この直鎖状トリユビキチン(tri-ubiquitin)とヒトABIN2(NF-kBに対するA20-binding inhibitor)のUBANドメイン(Ubiquitin binding in ABIN and NEMO domain)を含むフラグメントとの複合体ABIN2:tri-ubiquitinのX線結晶構造解析、等温滴定型熱量測定(ITC)、多角度光散乱(MASL)、および部位特異的突然変異誘発法を組合せて、結合の様相とその構造基盤を明らかにした。
- ABIN2は、NF-kBの活性化の鍵を握っているNEMO(参考図中央左参照)とユビキチン結合特性を共有していた。UBANドメインを有するNEMOと同様にABIN2は長い平行なαヘリックスからなるコイルドコイル二量体を形成していた。
- 興味深いことに、直鎖状トリユビキチンが2本のABIN2二量体をブリッジしていた。これは、直鎖状トリユビキチンが中央付近で折れ曲がり、左端のユビキチンと中央のユビキチンにABIN2二量体が結合し、中央のユビキチンと右端のユビキチンにもう一方のABIN2二量体が結合することで実現していた。中央のユビキチンにおいては、そのβシート表面のN末端領域(いわゆるPhe4パッチを含む)に一方が結合し、同一表面のC末端領域(カノニカルな結合サイトであるいわゆるIle44パッチを含む)にもう一方が結合していた。
- 直鎖状トリユビキチンについては、トリユビキチンからの3つのIle44パッチを標的としてそれぞれUIM(ubiquitin interacting motif)、UBA(ubiquitin-associated domain)、およびUIMとPru(pleckstrin-like receptor for ubiquitin of Rpn13)が結合することが知られている。今回の報告により、ユビキチンの長さによってもユビキチンの機能が多様化することが明示された。

2017年01月06日

- Corresponding author: Yun-Xing Wang (Structural Biophysics Laboratory, CCR, NCI)
- ノンコーディングRNAの一種であるリボスイッチ(riboswitches)はmRNAの3'非翻訳領域に位置し、そのアプタマードメインにリガンド(例 アデニン)が結合すると、下流の遺伝子発現プラットフォームのスイッチを入れる。研究チーム ……

- Corresponding author: Yun-Xing Wang (Structural Biophysics Laboratory, CCR, NCI)
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ノンコーディングRNAの一種であるリボスイッチ(riboswitches)はmRNAの3'非翻訳領域に位置し、そのアプタマードメインにリガンド(例 アデニン)が結合すると、下流の遺伝子発現プラットフォームのスイッチを入れる。研究チームは今回、試料調整を工夫しフェムト秒X線自由電子レーザ(XFEL)パルスを利用して、リボスイッチ・アプタマードメインのアポ状態からリガンド結合状態への構造変化を観察した。
[情報拠点注] 2分12秒のビデオ解説こちらから https://youtu.be/obceI3mSfhc -
Vibrio vulnificus 由来のリボスイッチの膨大なコピーを含むナノ結晶とアデニン分子を含む溶液とを共通のノズルからジェット噴射させ(情報拠点注:原論文で’mix-and-inject’と称している)、XFELパルスを照射する。ナノ結晶ゆえにアデニンはリボスイッチアプタマーのアデニン結合ポケットに迅速かつ一様に浸入することが可能になり、また、XFEL照射のタイミングを微調整することで、アプタマードメインのアデニン結合前から結合後までの動態の観察を実現。
- 混合開始から10秒遅れで、アプタマードメインの構造変化の中間状態を捉えることができ、10分以上経過したところで、最終的な結合状態を得た。このようにして、中間状態でのアデニン結合ポケットのコンフォメーション変化およびアポ構造と劇的に異なるリガンド結合構造が明らかになり、少なくとも4状態からなるアプタマードメインの反応機構モデルを支持する結果を得た。
- ’mix-and-inject’XFEL連続フェムト秒結晶構造解析は、大きなコンフォメーション変化を伴う場合でも、生体高分子とリガンドの間の生化学的に重要な相互作用の解明に有用である。
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[情報拠点注] リボスイッチ関連論文
- NMR解析: Anke Reining et al. “Three-state mechanism couples ligand and temperature sensing in riboswitches” Nature. 2013 Jul 18;499(7458):355-9. Published online 2013 July 10.
- X線結晶構造解析: Alexander Serganov et al. “Structural basis for discriminative regulation of gene expression by adenine- and guanine-sensing mRNAs.” Chem. Biol. 2004 Dec;11(12):1729-41.
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[情報拠点注] XFEL連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)関連ニュースウオッチ記事
- 2016/12/29 連続フェムト秒結晶構造解析法で光反応時のバクテリアロドプシンの構造変化を見る
- 2016/05/17 連続フェムト秒結晶構造解析法(SFX)でPhotoactive Yellow Proteinの光異性化を見る
構造→5SWD: Structure of the adenine riboswitch aptamer domain in an intermediate-bound state (分解能 2.5 Å)

2017年01月05日
- Corresponding authors: 鈴木未来子;山本雅之(東北大学)
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[背景]
- KEPA1-NRF2システムは、酸化ストレスと生体異物ストレスに対する細胞の防御システムを調節する。NRF2は転写因子であり、抗酸化、解毒および代謝に関わる酵素やトランスポーターをコードする細胞保護遺伝子の発現を活性化する。ストレスのない状態では、KEAP1がNRF2タンパク質を分 ……
- Corresponding authors: 鈴木未来子;山本雅之(東北大学)
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[背景]
- KEPA1-NRF2システムは、酸化ストレスと生体異物ストレスに対する細胞の防御システムを調節する。NRF2は転写因子であり、抗酸化、解毒および代謝に関わる酵素やトランスポーターをコードする細胞保護遺伝子の発現を活性化する。ストレスのない状態では、KEAP1がNRF2タンパク質を分解することでNRF2の活性を抑制し、ストレスを受けた状態でKEAP1によるNRF2分解促進が停止し、短時間で蓄積するNRF2が標的遺伝子の転写を活性化する。
- 様々な癌細胞で、KEAP1を介したNRF2分解の機構が不全となりNRF2が恒常的に蓄積される現象が起きている。このNRF2の蓄積は、癌細胞の増殖を利し、また癌細胞に抗癌剤と放射線療法に対する耐性をもたらす。
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研究チームは今回、NRF2集積による癌細胞の化学療法と放射線療法に対する耐性を抑制することを目的として、化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニングによってNRF2阻害剤を探索し、その結果、ハロフジノン(halofuginone)誘導体を同定した。
- ハロフジノンの低毒性の誘導体を低量処方することでNRF2のタンパク質レベルが低減した。すなわち、ハロフジノンが細胞内のアミノ酸飢餓応答を誘導することで、全体的なタンパク質の合成を抑制し急速にNRF2を欠損させた。
- ハロフジノンの処方によって、NRF2依存癌細胞の抗癌剤耐性がin vitro でもin vivo でも減弱した。
論文タイトル相当、Corresponding author(s)、概要、書誌情報、関連文献などを記載しています.[情報拠点].

2017年01月05日
- Corresponding author: 大石真也(京都大学)
- Grb2は細胞内シグナル伝達を仲介するアダプタータンパク質である。Grb2は、EGFRその他のシグナル伝達分子のリン酸化チロシン(pY)を含むペプチドと相互作用するSH2(Src-homology 2)ドメインを有しており、抗癌剤の標的とされている。研究チームは今回、天然物およびその鏡像異性体からGrb2 SH2ドメインの新奇 ……
- Corresponding author: 大石真也(京都大学)
- Grb2は細胞内シグナル伝達を仲介するアダプタータンパク質である。Grb2は、EGFRその他のシグナル伝達分子のリン酸化チロシン(pY)を含むペプチドと相互作用するSH2(Src-homology 2)ドメインを有しており、抗癌剤の標的とされている。研究チームは今回、天然物およびその鏡像異性体からGrb2 SH2ドメインの新奇阻害剤を同定することを目的として、合成Grb2 SH2ドメインタンパク質の鏡像異性体の双方を対象とするスクリーニングシステムを開発した。天然物のほとんどには1種類の鏡像異性体しか存在しないが、合成によって2種類の鏡像異性体へと拡張したライブラリーをスクリーンの対象とすることが可能となる。
- タンパク質の合成法として、2セグメントのペプチドを単一のネイティブ・ケミカル・ライゲーション(NCL)で結合する手法と、3セグメントのペプチドをN末からC末に向けてNCLする手法を試み、後者の効率が高いことを見出した。
- Grb2 SH2ドメインのN末端またはAla115残基のラベル化によって、pYを含むペプチドとの結合を検出するプローブとなる。
- 適切な条件下でフォールディングした合成タンパク質は、期待通りリン酸化されたEGFRに結合したが、天然のL-Grb2 SH2とD-Grb2 SH2タンパク質はそれぞれ選択的にL-ペプチドとD-ペプチドと相互作用した。
論文タイトル相当、Corresponding author(s)、概要、書誌情報、関連文献などを記載しています.[情報拠点].

2017年01月05日

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[論文] プール型のCRISPRスクリーンからアレイ型のCRISPRスクリーンへ
- Corresponding author: Scott E. Martin (Genentech)
- これまで、プール型レンチウイルス・ライブラリーに拠るCRISPR/Cas9スクリーンが盛んに行われているが、大規模アッセイには不十分である一方で、アレイ型レンチウイル ……

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[論文] プール型のCRISPRスクリーンからアレイ型のCRISPRスクリーンへ
- Corresponding author: Scott E. Martin (Genentech)
- これまで、プール型レンチウイルス・ライブラリーに拠るCRISPR/Cas9スクリーンが盛んに行われているが、大規模アッセイには不十分である一方で、アレイ型レンチウイルススクリーニングは困難であった。
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研究チームは今回、合成siRNAを利用したアレイRNAiスクリーン法に倣って、「参考図1」下段にあるようにマイクロプレートを利用したアレイ型CRISPRスクリーン法を開発した。
- DNA複製を阻害するタンパク質をコードするGMNN 遺伝子を標的とするcrRNAsを合成し、Cas9を発現させたヒト大腸癌由来細胞株HCT-116細胞に導入したところ、導入後72時間でほとんどの細胞の核に異常が起こった。また、これらの細胞が、GMNNタンパク質を大きく欠損しGMNN DNAが編集を受けていることを確認した。
- 次に、E3リガーゼと脱ユビキチン化酵素を含む640種類のユビキチン関連遺伝子を標的とする合成CRISPR RNAsをスクリーンし、既知および新奇なDNA複製制御因子を同定した。これらの結果はsiRNAによる解析結果と整合したが、アレイ型CRISPR/Cas9スクリーンによって偽陽性が多いsiRNAの結果よりも統計的により有意なヒットが得られた。
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[論文] ネズミマラリア原虫Plasmodium yoelii のオーキネート運動性の必須遺伝子群をCRISPR/Cas9によって連続編集
- Corresponding author: Huiting Cui; Jing Yuan (Xiamen U.)
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[これまで]
- 多層の細胞膜ゆえにマラリア原虫の遺伝子改変は困難であったが、CRISPR/Cas9によってP. yoelii の遺伝子の削除、タグ付け、塩基置換が実現された。マラリア原虫属Plasmodium 非相同末端結合(NHEJ)修復機構が存在しないことから、Cas9遺伝子と相同組換え修復(HDR)用のドナーテンプレートDNA、加えて、抗マラリア薬のピリメタミンによる正の選択マーカーとしてヒト・ジヒドロ葉酸レダクターゼ(hDHFR)で構成されたベクタープラスミド(pYC)をエレクトロポーレションする手法によってである。
- hdhfr マーカーはP. yoelii のゲノムには組込まれずエピソームとして残存する。これは薬剤非存在下で徐々に消えていくが、第2の標的編集に必要な完全な排除には数週間から1ヶ月を超える期間を要する。
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研究チームは今回、pYCプラスミドに負の選択マーカーを加えたプラスミドpYCmによって、多重遺伝子の編集を実現した。
- 負の選択マーカーは、酵母のシトシンデアミナーゼ(cytosine deaminase (CD))とウリジル・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(uridyl phosphoribosyl transferase (UPRT))の活性有する酵母タンパク質yFCU。5-ホルミル化シトシンによる負の選択によって、yfcu 遺伝子を含むpYCプラスミドを帯びた細胞を全て排除。
- pYCmを利用して、P. yoelii のPyp28 遺伝子にmCherry でタグ付けした後、続いて、エピソームが存在しない細胞においてPyctrp とPycdpk3 をそれぞれ削除することに成功し、P. yoelii の多重遺伝子編集を実現した。
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[研究資源] CRISPR/Cas9に拠り、Keap1またはNrf2の両アレルをノックアウトしたヒトES細胞株を樹立
- Corresponding author: Jung-Hyun Kim (Korea National Inst. Health)
- ヒトES細胞株であるH9細胞のKeap1 遺伝子とNrf2 遺伝子の両アレルをそれぞれノックアウトしたES細胞株H9Keap1KO-A13とH9Nrf2KO-A13を樹立。Keap1 ホモ接合ノックアウトのH9Keap1KO-A13の形態、遺伝子発現およびin vivo 分化能は正常。Nrf2 ホモ接合ノックアウトのH9Nrf2KO-A13は、多分化能を維持し、三胚葉への分化能を有し、核型は正常。
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[論文] 効率の良いCRISPR/Cas9の相同組換え修復機構を介してオーエスキー病の原因である豚ヘルペスウイルス1型(Pseudorabies Virus/仮性狂犬病ウイルス)のBACを迅速生成
- Corresponding author(s): Tong-Qing An (Harbin Veterinary Research Inst.)
- 線形にしたドナープラスミドを利用し、CRISPR/Cas9の切断サイトの位置と相同アームからの距離を最適化し、二重切断にすることで、相同組換え(HR)効率86%とこれまでで最高の効率を達成した。
- これによって、大きなDNAウイルスを帯びたBAC (bacterial artificial chromosomes)を簡便迅速に構築することが可能になった。
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[レビュー] 作物の品種改良の新たなツール:標的ゲノム編集
- Corresponding author(s): Geung-Joo Lee (Chungnam National U.)
- 表1にメガヌクレアーゼ、ZFNs、TALENsおよびCas9を9項目について比較し、長所と短所をとりまめ。
- 表2に、イネ、オオムギ、タバコなどのべ32種の植物への応用例をとりまとめ。
author(s) をメモ形式で記載し、原著や関連データベースなどへのリンクを添えています。(情報拠点)
3 研究資源 H9Keap1KO-A13→So-Jung Kim et al. "A homozygous Keap1-knockout human embryonic stem cell line generated using CRISPR/Cas9 mediates gene targeting." Stem Cell Research. Available online 23 December 2016.
3 研究資源 H9Nrf2KO-A13→So-Jung Kim et al. "Generation of a Nrf2 homozygous knockout human embryonic stem cell line using CRISPR/Cas9." Stem Cell Research. Available online 23 December 2016.

2017年01月04日

- Last author: 浦野泰照(東京大学)
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β-ガラクシダーゼと発色基質X-galを代表とする酵素/基質の組合せからなるレポーターシステムが広く利用されているが、それぞれに一長一短があり、既存のシステムと直交するレポーターシステムがまだまだ必要とされている。
- 大腸菌由来のアゾ還元酵素AZoRは、酸素正常状態(normoxia)でもアゾ化合物におけるアゾ結合(N=N) ……

- Last author: 浦野泰照(東京大学)
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β-ガラクシダーゼと発色基質X-galを代表とする酵素/基質の組合せからなるレポーターシステムが広く利用されているが、それぞれに一長一短があり、既存のシステムと直交するレポーターシステムがまだまだ必要とされている。
- 大腸菌由来のアゾ還元酵素AZoRは、酸素正常状態(normoxia)でもアゾ化合物におけるアゾ結合(N=N) を還元・開裂する。研究チームは先行研究(Piao, W. et al., 2013)で、生細胞内において低酸素状態でアゾ結合の還元・開裂によって強い緑色蛍光(2-methyl rhodamine green(2-Me RG))を発生する無蛍光性(non-fluorescent)の化合物を合成していた。
- 研究チームは今回、AzoRの蛍光発生基質候補として、rhodamine(ローダミン)のアゾベンゼン部分を置換するazo rhodamine誘導体のライブラリーを設計・合成した。
- 合成したazo rhodamineはいずれも無蛍光性であった。フェムト秒分解能の吸収分光によって、光による励起状態の継続時間は5 ps未満であり、cis 異性体が形成されなかったことから、この無蛍光性は、N=N結合をめぐる超高速のコンフォメーション変化(例 ツイスト)によることが示唆された。
- 電子供与基を含むazo rhodamineは、AzoRによって強い緑色蛍光(2-Me RG)を発生したが、一方で、電子求引性基を含む誘導体には蛍光増が見られなかった。この機構は、電子供与基を含むazo rhodamineにおいては、N=Nが、AroRによってヒドラジンに還元され、さらに続く非酵素的反応によって開裂されるためであることも明らかになった。
- HeLa細胞において、AzoR/azo-rhodamineレポーターシステムによって、アゾ還元酵素を発現している生細胞が可能なことを、一細胞の分解能で実証した。

2017年01月04日
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[RESEARCH HIGHLIGHT] ゲノム編集活性のオフ・スイッチ
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CRISPR/Cas9の天然のオフスイッチを報告したPawlukらのCell 論文をハイライト:
- Pawluk , A. et al. “Naturally Occurring Off-Switches for CRISPR-Cas9.” C ……
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CRISPR/Cas9の天然のオフスイッチを報告したPawlukらのCell 論文をハイライト:
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[RESEARCH HIGHLIGHT] ゲノム編集活性のオフ・スイッチ
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CRISPR/Cas9の天然のオフスイッチを報告したPawlukらのCell 論文をハイライト:
- Pawluk , A. et al. “Naturally Occurring Off-Switches for CRISPR-Cas9.” Cell. 2016 December 15;167(7):1829-1838.e9. Published online 2016 December 8.
- ニュースウオッチ記事:CRISPR関連文献メモ_2016/12/16 2.[論文] CRISPR/Cas9活性の天然オフ・スイッチ
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抗CRISPRタンパク質に関連する論文とニュースウオッチ記事
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Rauch, B. J. et al. “Inhibition of CRISPR-Cas9 with Bacteriophage Proteins” Cell. Available online 29 December 2016
CRISPR関連文献メモ_2016/12/31 1.[論文] Cas9活性制御に展開可能なバクテリオファージ由来・抗CRISPRタンパク質 -
April Pawluk, Raymond H.J. Staals, Corinda Taylor, Bridget N.J. Watson, Senjuti Saha, Peter C. Fineran, Karen L. Maxwell & Alan R. Davidson. “Inactivation of CRISPR-Cas systems by anti-CRISPR proteins in diverse bacterial species” Nat. Microbiol Published online 2016 June 13.
CRISPR関連文献メモ_2016/06/18 2.[論文] 抗CRISPRタンパク質によるバクテリアCRISPR-CASシステムの不活性化
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Rauch, B. J. et al. “Inhibition of CRISPR-Cas9 with Bacteriophage Proteins” Cell. Available online 29 December 2016
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CRISPR/Cas9の天然のオフスイッチを報告したPawlukらのCell 論文をハイライト:
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[論文] Escherichia coli のCas1-Cas2インテグラーゼとプロトスペーサーおよびアクセプターDNAの三者複合体形成機構
- Corresponding author: Pierre Plateau (Université Paris-Saclay)
- ゲルシフトアッセイ(electrophoretic mobility shift assays (EMSAs))を利用して、Cas1-Cas2とプロトスペーサーおよびアクセプターとなるプラスミドDNAとの間の複合体形成を、in vitro で追跡し、CRISPR遺伝子座を有しスーパーコイル状のアクセプターDNAの場合に、長時間安定な三者複合体が形成されることを見出した。
- Cas1-Cas2のアクセプターDNAへの結合は、プロトスペーサーの存在によって亢進されるが、安定な複合体形成には、プロトスペーサーが、5塩基より長い3’末端一本鎖オーバーハングを持たないことが条件であった。
- CRISPR遺伝子座への変異導入実験から、CRISPR遺伝子座に隣接するリーダー配列の存在の如何によらず、リピートのパリンドロミック・モチーフが1つ存在すれば、安定な三者複合体が形成されることが明らかになった。
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[論文] CRISPR/Cas9によるPAF53ノックアウト実験はPAF53が哺乳類細胞の生存に必須であることを示唆した
- Corresponding author: Lawrence I. Rothblum (U. Oklahoma College of Medicine)
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栄養そしてまたは成長因子の欠乏下の哺乳類細胞では本質的にrDNAの転写が停止するが、1996年にPAF53が特定のrDNA転写に必須であり、PAF53のレベルが成長因子に制御されることが報告されていた(Hanada et al., 1996)。脊椎動物PAF53の酵母ホモログA49は、酵母の生存には必須ではないが“最適な増殖に必須”であると報告された(Wang et al., 2015)。研究チームは今回、PAF53が細胞生存に必須か否かを確定することを目的として、CRISPR/Cas9技術による遺伝子産物のノックアウト実験を行った。
- ヒト293細胞においてPAF53の第2エクソンを標的とするsgRNAによるノックアウトを試みた。また、FLAG標識したマウスPAF53をコードしたプラスミドをCRIPR/Cas9システムと同時に感染させてその効果を見た。
- ヒトのPAF53を発現しない細胞は、マウスPAF53の異所性発現が存在しない場合に限られていた。すなわち、細胞は、リコンビネーションまたはオルターナティブリーディングフレームを介した独特の機構によってPF53を発現し、PAF53が細胞生存に必須であることを示唆した。
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[論文] CRISPR/Cas9システムによって、分裂終了細胞におけるシナプトブレビン/シナプス小胞結合膜タンパク質(synaptobrevin/VAMP)機能を阻害
- Corresponding author: Lisa M. Monteggia (U. Texas Southwestern Medical Center, )
- Synaptobrevin 2(Syb2/VAMP2)を標的とするCRISPR/Cas9レンチウイルスを初代培養海馬ニューロンに感染させることで、Syb2タンパク質と免疫組織化学的染色を劇的に低減し、Syb2が多くの終末ボタン(boutons)で検出されなくなり、また、編集された初代培養海馬ニューロンがSyb2がノックアウトされたニューロンの表現型を再現することを見出した。
- CRISPR/Cas9を高効率なレンチウイルスで感染させることで、ニューロンの大部分でSyb2をノックアウト可能であり、この手法は、分裂終了後ニューロンにおける細胞非自律的シナプス前の表現型の解析ツールと成り得る。
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[特許] Compositions comprising synthetic polynucleotides encoding CRISPR related proteins and synthetic sgRNAs and methods of use.
- 発明者:Hoge, Stephen (Cambridge, MA, US); Yi-chun, Eric (Cambridge, MA, US); Chakraborty, Tirtha (Cambridge, MA, US)
- 譲受人:Moderna Therapeutics, Inc. (Cambridge, MA, US)
author(s) をメモ形式で記載し、原著や関連データベースなどへのリンクを添えています。(情報拠点)
1 RESEARCH HIGHLIGHT→Ross Cloney (Senior Editor, Nature Communications). "A genome-editing off switch." Nature Reviews Genetics. Published online 28 December 2016.

2017年01月03日

- 2016年のScience Breakthrough of the yearは、宇宙の震え(The cosmos aquiver)であったが、次点(the runners-up)9件の一つに、天然に存在しないタンパク質合成が選ばれた。
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関連論文とニュースウオッチ記事のリスト
- 2016/07/24 Science 誌の表紙を飾る正二十面体タンパク ……

- 2016年のScience Breakthrough of the yearは、宇宙の震え(The cosmos aquiver)であったが、次点(the runners-up)9件の一つに、天然に存在しないタンパク質合成が選ばれた。
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関連論文とニュースウオッチ記事のリスト
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2016/07/24 Science 誌の表紙を飾る正二十面体タンパク質複合体を設計・作製・構造決定
- Jacob B. Bale et al. “Accurate design of megadalton-scale two-component icosahedral protein complexes.” Science. 2016 July 22;353(6297):389-394.
- Yang Hsia et al. “Design of a hyperstable 60-subunit protein icosahedron.” Nature. 2016 Jul 7;535(7610):136-9.
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2016/02/17 広範なインフルエンザウイルスの感染予防と感染後の治療に有効なタンパク質をデザインする
- Koday, M. T. et al. "A Computationally Designed Hemagglutinin Stem-Binding Protein Provides In Vivo Protection from Influenza Independent of a Host Immune Response." PLoS Pathog. 2016 Feb 4;12(2):e1005409.
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2016/07/24 Science 誌の表紙を飾る正二十面体タンパク質複合体を設計・作製・構造決定
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Breakthrough of the yearと次点8件のリスト
- Ripples in spacetime:100年前にアインシュタインが予言し40年間の探索を経た重力波の発見から重力波宇宙学の波紋広がる
- The exoplanet next door:太陽系の隣にある恒星プロキシマ・ケンタウリ(Proxima Centauri)に地球型惑星Proxima bを発見
- Artificial Intelligence ups its game:人工知能AlphaGo、囲碁の世界No.2を打ち破る
- Killing old cells to stay young:老兵は消え去るのみ
- Humans aren’t the only great apes that can ‘read minds’:類人猿も心を読む-他人も自分と同じように考えると想定して行動する
- Mouse eggs made in the lab:マウスiPSCからin vitro で卵子を作製し、受精を経て健常マウスを作出
- A single wave of migration from Africa peopled the globe:人類のほとんどはアフリカからの1回の移動の末裔である
- Genome sequencing in the hand and bush:MinION/スマホ/クラウドで感染症から生物多様性まで「その場」ゲノム解析が可能に
- Metalenses, megapromise:レンズ作製はガラス研磨技術から原子層堆積技術へ

2017年01月03日
- Corresponding authors: Jared E. Toettcher; Clifford P. Brangwynne (Princeton U.)
- 細胞内には、リボ核タンパク質(RNP)ボディー(body)、核小体、PMLボディーなど、膜に囲まれていない(membrane-less)が空間的に明確に区分されている細胞内小器官が多数存在する。こうした液体状顆粒構造体は、天然変性タ ……
- Corresponding authors: Jared E. Toettcher; Clifford P. Brangwynne (Princeton U.)
- 細胞内には、リボ核タンパク質(RNP)ボディー(body)、核小体、PMLボディーなど、膜に囲まれていない(membrane-less)が空間的に明確に区分されている細胞内小器官が多数存在する。こうした液体状顆粒構造体は、天然変性タンパク質領域(intrinsically disordered protein regions (IDRs))を介した相転移によって形成されるというのが共通認識になってきた。
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- プリンストン大学の研究チームは今回、光励起によって生細胞内でIDRを介した相転移を制御可能とする光遺伝学プラットフォーム“optoDroplet”システムを開発した。種々のRNA結合タンパク質のIDRにmCherry蛍光タンパク質とArabidopsis thaliana の光回復酵素相同領域(photolyase homology region (PHR))Cry2を結合したコンストラクトを構築し、光のオン・オフに対する反応を生細胞内で観察した。
- NIH 3T3細胞において、mCherryでラベルしたCry2 PHRは青色光によってほとんどクラスターを形成しなかったが、FUSのN末端IDR、ALSに関連したRNA結合タンパク質HNRNPA1のCマッタンIDRあるいはDDX4のN末端IDRとCry2 PHRのコンストラクトはすべて、ほとんどの細胞において急速にクラスターを形成した。
- コンストラクトは臨界濃度を超えた状態で、光によって相分離を起こし、時空間的に明確な液体状optoDropletsを形成し(liquid-liquid phase separation)、FUS optoDropletの形成は活性化サイクルを繰り返しても、可逆的であった。
- 一方で、高濃度な状態で高強度の光を照射すると不可逆的な固体状凝集体を形成するに至った。
- OptoDropletは、細胞内相転移と細胞生理および疾患との関連の解明に貢献するツールである。

2017年01月02日

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1[レビュー] 癌研究における遺伝子改変マウスモデル
- Corresponding authors: Martine H. van Miltenburg; Jos Jonkers (The Netherlands Cancer Institute)
- 遺伝子改変癌マウスモデル(Genetically engineered mouse models: GEMMs)は癌移植モデル ……

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1[レビュー] 癌研究における遺伝子改変マウスモデル
- Corresponding authors: Martine H. van Miltenburg; Jos Jonkers (The Netherlands Cancer Institute)
- 遺伝子改変癌マウスモデル(Genetically engineered mouse models: GEMMs)は癌移植モデルマウスよりも優れている。GEMMsは、ヒト癌の病理組織学的特徴や分子的特徴をよく再現し、遺伝的多様性を呈し、自発的に転移する。
- “Speeding up and fine-tuning mouse cancer modeling”の章で、ESCによるモデル、in vivo RNAiによるモデルに続く一節にて、CRISPR/Cas9技術によるモデルをレビューし、GEMMsの癌基礎研究の章で、ESC-CRISPR/Cas9によるハイスループットでの癌遺伝子スクリーンの応用例を紹介。
author(s) をメモ形式で記載し、原著や関連データベースなどへのリンクを添えています。(情報拠点)

2017年01月02日

- Corresponding author: Yao Cong (Shanghai Inst. Biological Sciences)
- TRiC (TCP-1 Ring Complex/CCT(chaperonin containing TCP-1))タンパク質は、8種類のサブユニットが形成するリングが2重に重なった形状(参考図参照)をとり、新生細胞質タンパク質の10%のフォールディングを助け ……

- Corresponding author: Yao Cong (Shanghai Inst. Biological Sciences)
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TRiC (TCP-1 Ring Complex/CCT(chaperonin containing TCP-1))タンパク質は、8種類のサブユニットが形成するリングが2重に重なった形状(参考図参照)をとり、新生細胞質タンパク質の10%のフォールディングを助ける真核生物のシャペロニンである。Congらは今回、クライオ電顕単粒子再構成法によって、Saccharomyces cerevisiae のTRiCがヌクレオチドが部分的に組み込まれた(nucleotide partially preloaded: NPP)開口状態(open state)と、ATPが結合した開口状態について、それぞれ4.7 Åと4.6 Åの分解能で再構成した。
- 複合体の外側にeGFPタグが現れるようなタグ付けによって開口状態における全サブユニットの位置決めを実現した。2重のリングからのCCT2サブユニットのペアが、想定外の、Z型をとっていた(参考図左図)。
- ATP結合によって、CCT2側に劇的なコンフォメーション変化が誘導され、TRiC複合体にアロステリックな協働現象が存在することが示唆された。
- TRiC複合体のCCT2側の5つのサブユニットが早期にATPと結合を開始し、CCT6側の3つのサブユニット(CCT3; CCT6; CCT8)がその後ATPに結合し、この2段階のATP結合が、複雑なマルチドメインタンパク質のフォールディングにエネルギー的に有利であると考えられた。

2017年01月01日
- Corresponding author: Edward N. Baker (U. Auckland); Wladek Minora (U. Virginia); John R. Helliwell (U. Manchester)
- 国際結晶学連合(International Union of Crystallography)のオープンアクセス・査読付きジャーナル IUCrJ 20 ……
- Corresponding author: Edward N. Baker (U. Auckland); Wladek Minora (U. Virginia); John R. Helliwell (U. Manchester)
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国際結晶学連合(International Union of Crystallography)のオープンアクセス・査読付きジャーナル IUCrJ 2007年1月号のeditorial, scientific commentariesならびにtopical reviewsでデータ共有について論考がなされている。
- 公的資金による研究の成果を公開することはオープンサイエンス(Open Science)においてなすべきことの一つであるが、本来、科学そのものの進歩が、その成果である概念が広く共有されることにかかっている。オープンアクセスジャーナルはその実現手段の一つであるが、同時に、裏付けとなる実験データが公開・共有されることが重要である。
- 結晶学においては、先人の先見の明と努力により、wwPDBを介して直接・間接に、120,000の高分子結晶構造、11,000のNMR構造および1100クライオ電顕構造をアクセス可能になっている。しかし、科学は立ち止まることはない。新たなタイプのデータへの対応に備える必要が有る。
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一次データ(raw crystallographic data(*))については、これまでに各研究室や各加速器施設に蓄積されてきたデータからはじまり、現在から将来にわたり生産されるデータの共有を図る試みが始まっており、SBGridには295データセットが、The Integrated Resource for Reproducibility in Macromolecular Crystallography (IRRMC) には6,053データセットが蓄積されている。
(*) raw crystallographic data = the sets of X-ray diffraction images used to derive the structure-factor files and atomic coordinates. - 今や計算機資源はraw crystallographic data蓄積に対応可能なレベルに達しており、raw dataの共有ひいては再利用を促進するためには、メタデータの整備と、生データ囲い込みのメンタリティーを打破していくことが必要である。
- "Topical review"は、2015年にCroatiaで開催されたIUCrワークショップ"Metadata for raw data from X-ray diffraction and other structural techniques"での議論とその後の反響を受けてとりまとめられた報告である。また同レビューは、世界結晶年と定められた2014年からの流れを受けて、広い意味で納税者/一般人(layperson)の間で結晶学が広く理解されることを期待している。例えば、'Big Data'の宿題を与えられた生徒・学生が"結晶学"を題材に取り上げ、あるいは政治家の”結晶学”への関心を高めるなど。
Scientific commentaries→Marek Grabowski & Wladek Minor. “Sharing Big Data.” IUCrJ. 2017 Junuary;4(1):3-4.

2017年01月01日
- Corresponding author: Salvador Aznar Benitah (Inst. Research in Biomedicine, BIST)
- 癌の転移を標的とする抗転移療法に進展が見られない。ほとんどのヒト癌において、癌の転移を開始する細胞を特定できていないことが一因である。Benitahらバルセロナの研究チームは今回、CD36タンパク質が転移能を有する癌細胞のマーカ ……
- Corresponding author: Salvador Aznar Benitah (Inst. Research in Biomedicine, BIST)
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癌の転移を標的とする抗転移療法に進展が見られない。ほとんどのヒト癌において、癌の転移を開始する細胞を特定できていないことが一因である。Benitahらバルセロナの研究チームは今回、CD36タンパク質が転移能を有する癌細胞のマーカであることを見出した。
- 親油性蛍光色素DiDでラベルしたヒト口腔癌由来細胞をNSGマウスの口腔へ同所移植した中で、ラベルを保持し(label-retaining cell: LRC)細胞分裂が遅く(slow cycling cell)、脂肪酸受容体CD36と脂質代謝遺伝子を高発現し、転移開始能を有するCD44bright細胞のサブポプレーションが存在することを見出した。
- パルミチン酸または高脂肪食は、CD36+転移開始細胞の転移能を特異的に亢進した。
- CD36を阻害す中和抗体は、ヒト口腔癌の同所移植免疫不全または免疫応答性モデルマウスにおける転移を、副作用を伴ううことなく、ほぼ完全に阻害した。
- 口腔癌の他に、ヒトのメラノーマと乳癌についてもCD36阻害が転移を抑制した。

2016年12月31日
- 近年、RNA修飾を介した遺伝子発現調節研究に画期的な成果が続き、エピトランスクリトミクス(epitranscriptomics)の分野が形作られるに至った。このダイナミックなRNA修飾の分布、調節および機能の研究は、次世代シーケンシング技術によって具体化してきた。
- Nature Methods のNews Featureは1960年代からの研究の展開を辿り、Reviewでは真核生 ……
- 近年、RNA修飾を介した遺伝子発現調節研究に画期的な成果が続き、エピトランスクリトミクス(epitranscriptomics)の分野が形作られるに至った。このダイナミックなRNA修飾の分布、調節および機能の研究は、次世代シーケンシング技術によって具体化してきた。
- Nature Methods のNews Featureは1960年代からの研究の展開を辿り、Reviewでは真核生物における主要なRNA修飾(N6-methyladenosine; N6; 2′-O-dimethyladenosine; 5-methylcytidine; 5-hydroxylmethylcytidine; inosine; pseudouridineN1-methyladenosine)を対象としてシーケンシング技術をレビューしまた新技術を展望し、Methods to WatchにてRNAを標的とするCRISPR/Casシステムを取り上げている。
- [Editorial] “Method of the Year 2016: Epitranscriptome analysis.” Nature Methods. 2017 January;14:1. Published online 2016 December 29.
- [News Feature] Michael Eisenstein. “Epitranscriptomics: mixed messages” Nature Methods. 2017 January;14:15-17. Published online 2016 December 29.
- [Review] Xiaoyu Li, Xushen Xiong & Chengqi Yi. “Epitranscriptome sequencing technologies: decoding RNA modifications” Nature Methods. 2017 January;14:23-31. Published online 2016 December 29.
- [Methods to Watch] Nicole Rusk. “CRISPR targets RNA.” Nature Methods. 2017 January;14:33. Published online 2016 December 29
- [RNA修飾データベース] “Modomics - A Database of RNA Modifications”

2016年12月31日
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[論文] Cas9活性制御に展開可能なバクテリオファージ由来・抗CRISPRタンパク質
- Corresponding author: Joseph Bondy-Denomy (UCSF)
- UCSFの研究チームは、リステリア症の病原体Listeria monocytogenes のプロファージから、大腸菌とヒト細胞において、現在最も広く ……
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[論文] Cas9活性制御に展開可能なバクテリオファージ由来・抗CRISPRタンパク質
- Corresponding author: Joseph Bondy-Denomy (UCSF)
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UCSFの研究チームは、リステリア症の病原体Listeria monocytogenes のプロファージから、大腸菌とヒト細胞において、現在最も広く応用されているStreptococcus pyogenes 由来Cas9を含むCas9のDNA結合と遺伝子編集を阻害する4種類のCRISPR/Cas9阻害タンパク質AcrIIA(AcrIIA1〜4)を同定した。
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これまでクラス1のCRISPR/Casシステムの機能を阻害するファージ由来のタンパク質が報告(*)されてきたが、今回初めて、クラス2のCRISPR/Casシステムに対する抗CRISPRタンパク質を同定した。
(*)CRISPR関連文献メモ_2016/10/20 4.[論文] 抗CRISPRタンパク質の溶液構造 - cas9 ならびにCRISPRスペーサーとその免疫応答の標的配列が共存ししてるバクテリアゲノムをバイオインフォマティクスで解析することで、抗CRISPRタンパク質候補を探索。
- AcrIIA2とAcrIIA4は、バクテリアにおいてdCas9の標的への結合を阻害する。
- AcrIIA2とAcrIIA4は、ヒト細胞においてCas9を介した遺伝子編集を阻害する。
- Cas9特異的な抗CRISPRタンパク質(“anti-CRISPRs”)は、CRISPR/Cas9のゲノム編集活性を制御するツールとして有用である。
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これまでクラス1のCRISPR/Casシステムの機能を阻害するファージ由来のタンパク質が報告(*)されてきたが、今回初めて、クラス2のCRISPR/Casシステムに対する抗CRISPRタンパク質を同定した。
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[論文] ペプチドタグ挿入によるRNA結合蛋白質(RBP)-RNA相互作用解析CLIP法の改良
- Corresponding author: Gene W. Yeo (UCSD/NUS/)
- YeoらはRBP-RNA相互作用解析法として開発されたCLIP(cross-linking immunoprecipitation)法を改良したeCLIP法を開発していたところ、免疫沈降に利用可能な品質の抗体が存在しない問題を認識していた。そこで今回、CRISPR/Cas9システムの相同組換え修復(HDR)を利用して内在RBP遺伝子座にペプチドタグを挿入し、タグ特異的な抗体を組み合わせるTAG-eCLIPを開発した。
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[論文] dCas9-VP160によるlammin α-1の発現上昇
- Authors: A. Perrin, J. Rousseau & J. P. Tremblay (Laval U.)
- [背景] ラミニンα1の遺伝子LAMA1 は、胚形成時に限って発現するラミニン-111を構成する鎖である。筋ジストロフィーモデル動物(mdxマウス)にラミニン-111(laminin-111)を投与すると筋繊維鞘が安定になり、血中クレアチンキナーゼのレベルが野生型のレベルまで回復し、運動誘発性障害から筋肉が保護されることから、ラミニン-111増量によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー療法が考えられる。
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研究チームは今回、ラミニン-111タンパク質の反復投与に変えて、dCas9に転写活性化VP160ドメインを融合し、Lama1遺伝子のプロモーターを標的とするgRNAsを組み合わせることで内在Lama1遺伝子発現を亢進させる手法を試行した。
- dCas9-VP160をコードするプラスミドをエレクトロポレーションすることで、マウス横紋筋由来C2C12細胞株とマウス筋肉における発現を実現し、さらに、2 gRNAsまたは3 gRNAsを利用することで発現が上昇することを見出した。
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[論文] βサラセミア患者由来iPSCsの変異修復法
- Corresponding authors: Xiaoping Li (Guangzhou Inst. Biomedicine and Health); Lei Bu (New York U. School of Medicine); Yong Fan (The Third Affiliated Hospital of Guangzhou Medical U.)
- “High fidelity”に改変されたCas9(SpCas9-HF1)、ssODNおよび低分子L755507を組み合わせた効率の高い相同組換え修復機構を介して、βサラセミア iPSCsのHBB遺伝子のβ41/42(TCTT)欠損変異について、ゲノム編集の痕跡を残すことなく両アレルを一段階で修復し、このiPSCsから造血肝細胞を経て分化した赤芽球は、正常なβグロビン転写物を発現した。
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[レビュー] 配列特異的ヌクレアーゼ(site specific nucleases: SSNs)を利用した遺伝子ターゲッティングを介した精密なゲノム編集による作物改良
- Corresponding author: Lanqin Xia (Institute of Crop Sciences)
- ZFN、TALENおよびCRISPR/Cas9の遺伝子テーゲッティング技術の作物改良への応用の現状を相同組換え修復機構の利用に焦点を当てながらレビュー
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[特許] Methods for Nuclear Reprogramming Using Synthetic Transcription Factors
- 発明者:Abraham, Eytan (Potomac, MD, US); Payne, Thomas (Cambridge, GB); Young, Robert J. (London, GB); Friedrich Ben, Nun Inbar (Rockville, MD, US)
- 譲受人:Lonza Walkersville, Inc. (Walkersville, MD, US)
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[特許] Genome Engineering
- 発明者:Church, George M. (Brookline, MA, US); Yang, Luhan (Somerville, MA, US); Guell, Marc (Boston, MA, US); Yang, Joyce Lichi (Cambridge, MA, US)
- 譲受人:President And Fellows Of Harvard College (Cambridge, MA, US)
author(s) をメモ形式で記載し、原著や関連データベースなどへのリンクを添えています。(情報拠点)

2016年12月30日
- Corresponding authors: Cyrus M. Ghajar (Fred Hutchinson Cancer Research Center); Mina J. Bissell (Lawrence Berkeley National Laboratory)
- 癌進行と転移のモデルは、原発部位で徐々に遺伝的変異を蓄積しつつ癌細胞が増殖していくなかで、転移能を獲得した播種性癌細胞( ……
- Corresponding authors: Cyrus M. Ghajar (Fred Hutchinson Cancer Research Center); Mina J. Bissell (Lawrence Berkeley National Laboratory)
- 癌進行と転移のモデルは、原発部位で徐々に遺伝的変異を蓄積しつつ癌細胞が増殖していくなかで、転移能を獲得した播種性癌細胞(disseminated cancer cells: DCCs)が、他の部位・組織へ移行し定着・増殖する、という直線状のモデルであった。一方で、ヒト乳癌で、DCCsにおける遺伝的変異が原発癌細胞における遺伝的変異よりも少ないというデータや、’非侵襲性’乳癌患者の20〜30%の骨髄にDCCsが存在するというデータが、示されてきた。さらに、Her2 の過剰発現による乳癌モデルマウスにおいて、Her2 の発現が始まった直後で乳腺における癌性変異が電子顕微鏡を利用することではじめて検出可能になるステージである4週齢で骨髄にDCCsが検出され、また、乳癌が触診可能になるには14週を要することが報告されていた。
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今回、Aguirre-GhisoとKleinらの共同研究チームは乳癌モデルマウスにおいて乳癌の極めて早期に癌細胞の播種が起こるとする論文2報をNature 12月22日号(12月14日オンライン刊行)に発表した。
- [Hosseini論文] 9週齢に達する前で乳癌が触診にかからないマウス乳腺由来の上皮細胞の遺伝子発現を解析;プロゲステロン(progesterone)がプロゲステロン受容体(PGR)を発現する細胞(PGR+)にWNT4とRANKLタンパク質の分泌を促し、ひいては、PGR+近傍のPGR-細胞に転移を促し、骨髄細胞に早期 (early)DCCsとして浸潤することを見出した。
- [Harper論文] WNTシグナル伝達の亢進によってp38タンパク質が阻害されることで、早期癌の細胞がDCCsとして骨髄細胞へ浸潤することを見出した。
- いずれの報告においても、原発癌早期由来のDCCsは、後期由来DCCsよりも、骨髄細胞において効率良く転移癌を形成した。
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Nature 掲載論文
- Hedayatollah Hosseini, 〜 Julio A. Aguirre-Ghiso & Christoph A. Klein. “Early dissemination seeds metastasis in breast cancer.” Nature. 2016 December 22;540(7634):552–558. Published online 2016 December 14.
- Kathryn L. Harper, 〜 Christoph A. Klein& Julio A. Aguirre-Ghiso. “Mechanism of early dissemination and metastasis in Her2+ mammary cancer.” 2016 December 22;540(7634):588–592. Published online 2016 December 14.
2016年12月30日

- Corresponding author: Roderick MacKinnon (Rockefeller U.)
- 2003年ノーベル化学賞共同受賞者の一人であるMacKinnonらは今回、クライオ電顕単粒子再構成法によって、ウシのCLCチャネル(CLC-K)の構造を明らかにした。
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[背景]
- CLCタンパク質は塩素イオンなどのアニオンを膜輸送し、 ……
- Corresponding author: Roderick MacKinnon (Rockefeller U.)
- 2003年ノーベル化学賞共同受賞者の一人であるMacKinnonらは今回、クライオ電顕単粒子再構成法によって、ウシのCLCチャネル(CLC-K)の構造を明らかにした。
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[背景]
- CLCタンパク質は塩素イオンなどのアニオンを膜輸送し、真核生物において筋肉の膜電位、腎臓における電解質の経上皮輸送、および細胞内小器官のpHとイオン組成を制御し、CLCをコードする遺伝子の変異は重篤な遺伝病をもたらす。
- CLCタンパク質は、機能から見ると、Cl-チャネルと、Cl-/H+トランスポーター(2Cl-と1H+を交換する二次性能動輸送体)の2つのサブグループに分かれ、Cl-輸送速度も、チャネルの方がトランスポーターよりも早いという違いが存在する。しかし、アミノ酸配列からみると、チャネルとトランスポーターの相同性が極めて高く構造の同一性が示唆されていた。
- CLCタンパク質はホモ二量体を形成しそれぞれに輸送経路が存在し(参考図1参照)、バクテリアと真核藻類由来のCLC トランスポーターでは、輸送経路に3箇所のCl-結合サイト(参考図2のSext、Scen、およびSint)が同定されている。
- SextとScenのサイトを囲むアミノ酸は、それぞれ、ゲートとなるグルタミン酸(Glugate)と、チロシンとセリン(TyrcenとSercen)であるが、これらは、トランスポーターとチャネルの間で保存されている。ここでも、トランスポーターとチャネルの機能の違いをもたらす構造基盤の手がかりが得られていない。
- ウシCLC-Kチャネルのクライオ電顕単粒子再構成は、トランスポーター似た構造(Class 1)と、異なる構造(Class 2)が存在し、両者の違いは、二量体を構成する2つのサブユニットの膜貫通ドメインの傾きの変化に対応していることが明らかになった。CLC-KチャネルClass-1とCLCトランスポーターの全体構造は類似しており、両者の構造のRMSDは1.5〜1.8 Åであった。
- CLCチャネルとCLCトランスポーターの構造の違いは、膜貫通ヘリックスのαCとαDをつなぎSercenを含むサイトゾル・ループ(αC-D)にあった。CLC-KにおいてはαC-Dのループが塩素イオンの輸送経路のサイトゾルでの狭窄を広げるような形状をとることで、Cl-/H+トランスポーターに仮定されているCl-の輸送障害が減じ、CLCチャネルによるCl-の高速輸送が実現しているモデルを提案。


2016年12月29日

- Corresponding author: Zhiheng Yu (CryoEM Shared Resources, Janelia Research Campus, HHMI); N. C. J. Strynadka (U. British Columbia)
- グラム陰性病原性バクテリアにはI型からIV型までの分泌装置が知られているが、III型分泌装置(Type III secretion ……

- Corresponding author: Zhiheng Yu (CryoEM Shared Resources, Janelia Research Campus, HHMI); N. C. J. Strynadka (U. British Columbia)
- グラム陰性病原性バクテリアにはI型からIV型までの分泌装置が知られているが、III型分泌装置(Type III secretion system: T3SS)の中心は宿主細胞へ病原因子を送り込むニードルを菌体外へ突出させている(参考図左図参照)インジェクチソーム複合体である。研究チームは今回、クライオ電顕単粒子再構成法によって、Salmonella enterica serovar Typhimurium(ネズミチフス菌)SPI-1(Salmonella pathogenicity island 1: SPI-1)の構造解析を試みた。 [情報拠点注] III型分泌装置を構成するタンパク質はゲノム上でpathogenicity islandにコードされている。
- [情報拠点注] クライオ電顕法レビューの一例:岩崎憲治. “新時代:クライオ電子顕微鏡による近原子分解能での解析” ライフサイエンス領域融合レビュー 2016年11月4日.
2016年12月29日
- Corresponding authors: Richard Neutze (U. Gothenburg);岩田 想(RIKEN SPring-8/京都大学)
- バクテリアロドプシン(bR)は発色団レチナールを含む。レチナールは光を受けると暗状態から異性化し、分子内のプロトン移動を経て細胞外へプロトンを輸送する。このプロトンの能動的輸送の間に極めて高速で起こるロドプシンのコンフォメーション変化を ……
- Corresponding authors: Richard Neutze (U. Gothenburg);岩田 想(RIKEN SPring-8/京都大学)
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バクテリアロドプシン(bR)は発色団レチナールを含む。レチナールは光を受けると暗状態から異性化し、分子内のプロトン移動を経て細胞外へプロトンを輸送する。このプロトンの能動的輸送の間に極めて高速で起こるロドプシンのコンフォメーション変化を捉えることはこれまで困難であった。研究チームは今回、連続フェムト秒結晶構造解析法(Serial Femtosecond Crystallography: SFX)を利用することで、bRの暗状態から可視光レーザーによる光励起後〜1.7ミリ秒にわたる間13の時点の構造を2.1 Å分解能で解いた。
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[PDB登録bR構造 (カッコ内はbRへの可視光レーザ照射後の経過時間)]
5B6V (暗状態: 0 s);5B6W (16 ns);5H2H (40 ns);5H2I (110 ns);5H2J (290 ns);5B6X (760 ns);5H2K (2 μs);5H2L (5.25 μs);5H2M (13.8 μs);5B6Y (36.2 μs);5H2N (95.2 μs);5H2O (250 μs); 5H2P (657 μs);5B6Z (1.725 ms)
[情報拠点注] 原論文には3種類のムービーも添えられています。 - ロドプシンにおけるレチナールの異性化にともなうシッフ塩基のプロトンへの親和性低下、レチナールの構造変化の周辺残基の細胞質側への変位と水分子の配置、プロトン輸送経路の出現など、膜電位に抗するプロトンの輸送をもたらす一連の光応答中間構造体の構造とその間の遷移が明らかになった。
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[PDB登録bR構造 (カッコ内はbRへの可視光レーザ照射後の経過時間)]
- [情報拠点注] 本ニュースウオッチ欄にはこれまでにSFX関連記事が16件登録されています。その中で2016年5月17日に「連続フェムト秒結晶構造解析法(SFX)でPhotoactive Yellow Proteinの光異性化を見る」を掲載しています。
2016年12月29日
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12月16日
- UC BerkekeyなどがCRISPR/Cas9技術をめぐるクロスライセンスを発表
- 2016/12/20 CRISPRニュース:CRISPR特許合従連衡
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12月19日
- Editas Medicineが、Cpf1と改変Cas9などのヒト疾患治療への応用を対象として、the Broad Institut ……
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12月16日
- UC BerkekeyなどがCRISPR/Cas9技術をめぐるクロスライセンスを発表
- 2016/12/20 CRISPRニュース:CRISPR特許合従連衡
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12月19日
- Editas Medicineが、Cpf1と改変Cas9などのヒト疾患治療への応用を対象として、the Broad Institute of MIT and Harvard、Harvard University、Massachusetts Institute of Technology (MIT)、Wageningen University、the University of Iowa、ならびに東京大学から包括的に独占的実施権(exclusive license)を獲得した、と発表
- Editas Medicine. “Editas Medicine Extends CRISPR Genome Editing Leadership Through Licensing of New CRISPR Technologies -- Company to Receive Global Licenses for Novel CRISPR System Cpf1 and Advanced Forms of Cas9 --” 2016 December 19.
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12月22日
- Science から”accelerated article”としてオンライン刊行されたDoudnaとBanfieldの論文の“competing financial interest statement”には、“The Regents of the University of Californiaがprovisional applicationを出願した”と記載。CRISPR-CasXのサイズは〜980 AAとこれまでで最小(spCas9 1,386 AA;Cpf1 〜1,300 AA;saCas9 1,053 AA)であるが、有用性のデータ蓄積が必要。
- CRISPR関連文献メモ_2016/12/27 2.[論文] 未だ分離培養されていない環境微生物からCas9に加えて新規Cas、CRISPR-CasXとCRISPR-CasY、を発見
2016年12月28日
- 日本医療研究開発機構(AMED)のWebサイトに次期「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業」の公募概要が掲載されました: http://www.amed.go.jp/koubo/010120161219.html
- [情報拠点注]事業内容、公募要領、研究開発提案書ならびに下記の日程につきましても必ずAMED Webサイトにてご確認下さい。 ……
- 日本医療研究開発機構(AMED)のWebサイトに次期「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業」の公募概要が掲載されました: http://www.amed.go.jp/koubo/010120161219.html
- [情報拠点注]事業内容、公募要領、研究開発提案書ならびに下記の日程につきましても必ずAMED Webサイトにてご確認下さい。
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重要な日程
- 公募期間:平成28年12月28日~平成29年1月27日
- 公募締切:2017年1月27日
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説明会参加申し込み締切:平成29年1月12日正午(締切日前でも定員に達し次第登録受付終了)
- 説明会:平成29年1月13日(金)13時30分~14時30分
- 東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル10階コンファレンススクエアM+「グランド」
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事業を構成するユニット(カッコ内は領域)
- プラットフォーム機能最適化
- 構造解析(構造解析;タンパク質生産)
- ケミカルシーズ・ リード探索(ライブラリー・ スクリーニング;構造展開)
- バイオロジカル シーズ探索
- インシリコ

2016年12月28日

- Corresponding author: 小林広幸 (東海大学)
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腫瘍細胞における遺伝的変異の機構解明の一環として、急性白血病細胞株MOLT-3とそのイダルビシン(Idarubicin)耐性株MOLT‐3/IDRにおける遺伝的変異を比較解析した。
- ミトコンドリアDNAと核DNAの比較解析から、MOLT‐3/IDRに特有な変異としてミトコンドリアND3遺伝子における変異 ……

- Corresponding author: 小林広幸 (東海大学)
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腫瘍細胞における遺伝的変異の機構解明の一環として、急性白血病細胞株MOLT-3とそのイダルビシン(Idarubicin)耐性株MOLT‐3/IDRにおける遺伝的変異を比較解析した。
- ミトコンドリアDNAと核DNAの比較解析から、MOLT‐3/IDRに特有な変異としてミトコンドリアND3遺伝子における変異p.Thr61Ileを同定した。
- さらに、CGHアレイ解析からGALNT2 遺伝子を含む薬剤耐性関連候補遺伝子5種類を同定した。GALNT2 のエクソンのシーケンシングから、MOLT-3細胞には存在しないMOLT-3/IDR細胞特有の変異、ストップコドン内におけるG1716K変異、を発見した。この変異は、GALNT2 にコードされるタンパク質に18アミノ酸の伸長をもたらした。
- 変異型GLANT2 の発現をPCRで確認しさらに由来タンパク質の立体構造を予測し、薬剤耐性に関与する構造基盤について論じた(参考図参照)。
論文タイトル相当、Corresponding author(s)、概要、書誌情報、関連文献などを記載しています.[情報拠点].
2016年12月28日
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[論文] CRISPR/Cas9によるオンターゲットのフレームシフト変異がタンパク質をノックアウトするとは限らない
- Corresponding author: 権藤洋一(理化学研究所)
- 研究チームは今回、ヘッジホッグ(HedgeHog: Hh)シグナル伝達研究の一環として、CRISPR/Cas9によって、マウスNIH3T3細胞において、Hhシグナ ……
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[論文] CRISPR/Cas9によるオンターゲットのフレームシフト変異がタンパク質をノックアウトするとは限らない
- Corresponding author: 権藤洋一(理化学研究所)
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研究チームは今回、ヘッジホッグ(HedgeHog: Hh)シグナル伝達研究の一環として、CRISPR/Cas9によって、マウスNIH3T3細胞において、Hhシグナル伝達経路の最下流に位置する転写因子GLI3をコードする遺伝子のノックアウトを試みた。
- 標的としたGli3 遺伝子の両アレルにフレームシフト変異が導入された細胞株の樹立に成功したが、いずれの細胞株においても、 野生型および変異型遺伝子のN末端とC末端それぞれにFlagタグとC末端にHAタグを結合させた発現ベクターを利用することで、野生型に比べてN末端を欠いたほぼ船長のGLI3タンパク質が生成されることを確認した。
- この予期せざるGli3 発現は、野生型の翻訳開始コドンの下流に位置する開始コドンから野生型終止コドンまでが翻訳されるという定型外の翻訳(illegitimate translation: ITL)が起こったことを意味する。
- 野生型の遺伝子においてもupstream open reading frames (uORFs)の制御によってITLが発生することが知られており、CRISPR/Cas9によって人工的なuORFsが生じたと見ることができる。
- 理研プレスリリース “ゲノム編集の落とし穴-“セントラルドグマ”が書き直される可能性も-” 2016年12月26日
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[論文] 筋強直性ジストロフィー1型の療法としてのCRISPR/Cas9
- Corresponding author: Bé Wieringa; Derick G. Wansink (Radboud Inst. Molecular Life Sciences)
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筋強直性ジストロフィー1型(Myotonic Dystrophy Type 1: DM1)は、DMPK 遺伝子内の(CTG・CAG)nリピート伸長(37から数千トリプレット)から、RNAの機能獲得を介して、発症すると考えられている。これまでは、変異DMPK (CUG)n RNAを標的とする療法が研究されてきた。研究チームは今回、CRISPR/Cas9によるトリプレット・リピート伸長から大規模な領域を削除する療法の可能性を探った。
- リピートの両側の隣接領域を標的とする二重CRISPR/Cas9によって、健常人/DM1患者/DM1モデルマウスの正常および異常な筋芽細胞におけるDMPK 内のリピートを正確かつ高効率で削除することが可能である。
- リピートの削除はDM1遺伝子座の遺伝子発現に悪影響を与えず、DM1の症状を改善する。
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[論文] CRISPR/Cas9によるハンチントン病変異アレルのin vitro /in vivo 編集
- Corresponding authors: Alex Mas Monteys; Beverly L. Davidson (The Children’s Hospital of Philadelphia)
- ハンチントン病(HD)は、ハンチントン遺伝子HTT の第1エクソンにおける36回を超えるCAGsリピート伸長によって生じる。HTT 遺伝子が細胞機能を担っていることから、遺伝子治療には変異HTT研究チームは今回、変異HTT 遺伝子座に存在するSPNsを利用して、変異HTT を特異的に編集可能なことを示した。
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[論文] miR-21を標的とするCRISPR/Cas9遺伝子編集によって、卵巣癌における上皮間葉転換を阻害する
- Corresponding authors: Junming Yue (U. Tennessee Health Science Center); Peixin Dong (北海道大学)
- 研究チームは、CRISPR/Cas9レンチウイルス・ベクターによって、miRNA遺伝子からの初期転写産物であるprimary miRNA (pro-miRNA)ヘアピン配列(ステムとヘアピンループを含む)に変異を導入することで、miRNAの発現を阻害することが可能なことを示した。
- miR-21を標的とするCRISPR/Cas9編集によって、細胞増殖、細胞移動および細胞浸潤が阻害され、卵巣癌細胞に抗癌剤への感受性をもたらし、さらに、上皮間葉転換が阻害されることを見出した。
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[論文] レーバー先天性黒内障の療法としてのCRISPR/Cas9
- Corresponding author: Guo-Xiang Ruan (Sanofi Genzyme)
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レーバー先天性黒内障(Leber congenital amaurosis: LCA)のサブタイプの中で最も多いLCA10の病因は、CEP290 遺伝子の変異である。研究チームは今回、CEP290 のスプライシング異常を帯びたLCA10患者の療法としてCRISPR/Cas9システムが有望であるとした。
- 293FT細胞にCEP290 スプライシング変異を導入して作出したLCA10細胞モデルにおいて、gRNAのペアを利用して高効率でイントロン性スプライシング変異を除去し野生型CEP290 の発現を回復することが可能なことを示した。
- また、二重アデノ随伴ウイルスを利用することで、マウス網膜においてCep290 のイントロン性フラグメントを高効率で除去することに成功した。この際、Cas9の活性を一過性に止めて過剰な免疫応答を回避するために、sgRNAの標的となるサイトをSpCas9のプラスミドに組み込んだ“self-limiting” CRISPR/Cas9システムを開発・利用した。
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[レビュー] 創薬と療法におけるCRISPR/Cas
- Corresponding author: Jacob E. Corn (UC Berkeley)
- CRISPR/Casの医療への応用はこれまでのところもっぱらメンデル遺伝病の治療に集中しているが、CRISPR/Casは複雑な遺伝病や体細胞変異による疾患にも応用可能である。今回、CRISPR/Casが標的の同定とバリデーションを加速した上での次世代創薬、高信頼性のバイオマーカーの発掘、および、精密医療に与える影響をレビュー
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[レビュー] CRISPRから神経系の発生、機能および可塑性におけるクロマチン制御を見る
- Corresponding author: Anne E. West (Duke U.)
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神経生物学へのCRISPR/Cas技術の応用と、その神経系の発生と可塑性の理解への貢献をレビュー
- CRISPR/Cas9によるコーディング領域と非コーディング領域の編集
- CRISPR/Cas9による生細胞における遺伝子発現の観察
- シスエレメントの活性化と抑制
- CRISPR/dCas9によるエピゲノム編集
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[レビュー] CRISPRによるエピゲノム編集
- Corresponding author: Paul Enríquez (North Carolina State U.)
- ヒストン翻訳後修飾の編集;転写活性化;転写抑制;現行技術の限界とその克服
- DNAエピジェネティック修飾機構の研究への応用:DNAメチル化;DNA脱メチル化;新たなエピジェネティック修飾;m5dC誘導体の酸化;N6メチルデオキシアデノシンの発見;新奇DNAエオイジェネティック修飾;ノンコーディングRNAsの機能を探る;化合物および光が誘導するエピゲノム編集;エピゲノム編集と病理および治療び機会;CRISPR/Cas9システム以外の可能性
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[論文] Cpf1は各種シアノバクテリアのゲノム編集に有用である
- Corresponding author: Himadri B. Pakrasi (Washington U., St. Louis)
- 二酸化炭素を太陽光エネルギーを利用して直接最終産物へ変換することが可能なシアノバクテリは、バクオファクトリーとして有用であるが、これまで複数の遺伝子編集など、そのゲノム編集が必ずしも簡単ではなかった。研究チームは今回、Cpf1によって、Synechococcus、 Synechocystis およびAnabaena において、ノックイン、ノックアウトおよび点変異導入をマーカレスかつ高効率で実現可能なことを示した。
- [情報拠点注] Cpf1関連ニュースウオッチ記事:CRISPR関連文献メモ_2016/07/03
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[特許] Adeno-associated Virus-Mediated CRISPR-Cas9 Treatment of Ocular Disease
- 発明人:Buchlis, George (Philadelphia, PA, US);Anguela, Xavier (Philadelphia, PA, US);High, Katherine A. (Merion Station, PA, US)
- 譲受人:Spark Therapeutics, Inc. (Philadelphia, PA, US)
author(s) をメモ形式で記載し、原著や関連データベースなどへのリンクを添えています。(情報拠点)
2016年12月27日

- [情報拠点注] 転写開始過程の全体像についてはPatrick Cramerらの論文も含む3論文をとりあげた"ニュースウオッチ 2016年05月25日 転写開始過程の構造基盤"参照
- Corresponding authors: Patrick Cramer (MPI Biophysical Chemistry); Achilleas S. Frangakis (Buch ……

- [情報拠点注] 転写開始過程の全体像についてはPatrick Cramerらの論文も含む3論文をとりあげた"ニュースウオッチ 2016年05月25日 転写開始過程の構造基盤"参照
- Corresponding authors: Patrick Cramer (MPI Biophysical Chemistry); Achilleas S. Frangakis (Buchmann Inst. Molecular Life Sciences and Inst. Biophysics, GUF)
- 14のサブユニットで構成される分子量590kDaのPol Iの不活性なコンフォメーションについては、X線結晶構造解析によって原子分解能の構造が明らかにされたが、DNA-RNAスキャフォールドの結合によるコンフォメーション変化や転写進行中の動態は明らかにされていなかった。研究チームは今回、酵母Pol Iを対象として、DNA-RNAスキャフォルドが結合している転写進行中の状態、ならびに、DNA/RNAを結合していない単量体の状態の構造を、クライオ電顕単粒子再構成法で明らかにした(参考図参照)。加えて、クライオ電顕電子線トモグラフィーによっても、Pol Iの動態観察を行い(分解能 29 Å)、単粒子解析法で得た構造と整合する結果を得るとともに、Pol Iに入るrDNAとPol Iから出て来るrDNAの曲がり方がほぼ150°であることを見出した。
- これまでに報告されていた構造情報と今回得られた構造情報は、転写時の伸長が、クレフト(参考図参照)のクレフトの収縮と拡張によって制御されることを裏付けた。
- また、Pol Iが核酸に対して誘導適合(indeuced-fite)するだけでなく、核酸結合によってアロステリックに制御されることも明らかになった。

Copyright © 2014 National Institute of Genetics